NOWHERE BOY

Getting so much better all the time.

映画『ルーム』(2015年カナダ・アイルランド)

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あらすじ:施錠された狭い部屋に暮らす5歳の男の子ジャックと、母親ジョイ。彼女はオールド・ニックによって7年間も監禁されており、そこで生まれ育った息子にとっては、小さな部屋こそが世界の全てだった。ある日ジョイは、オールド・ニックとの言い争いをきっかけに、この密室しか知らないジャックに外の世界を教えるため、そして自身の奪われた人生を取り戻すため、部屋からの脱出を決心する。(以上シネマトゥデイより)

エマ・ドナヒューの同名のベストセラー小説の映画化。7年も監禁された親子の話なんて、よくよく考えたらゾッとするような題材ですね(´Д`;) 人生の大切な時間を奪われた後、人はどう生きていくのか。ジョイを演じたブリー・ラーソンは本作でアカデミー主演女優賞に輝いています。

物語の前半はジョイとジャック親子の”部屋”での暮らしぶりが描かれますが、オールド・ニックの失業を知った事を境に脱出しようと画策し、なんとか外界へ抜け出す事に成功。しかし事件が明るみになって無事解決にいたったかと思われたものの、新たな試練がジョイとジャックを待ち受けていました。ずっと閉ざされた空間で暮らしてきた2人にとってはむしろ外の世界に出てからの方が大変なわけです。

ジョイが監禁されていた7年の間に両親は別れ、母は再婚していた。父は「誘拐犯にレイプされて生まれた子」であるジャックを受け入れない。ジョイは自分に”だけ”に降りかかった不幸、そして失われた7年間の重さに苦しめられます。
一方ジャックも初めて接する”世界”にショックを受ける。生まれてから今までずっと"部屋”の中でママのジョイとしか接してこなかった彼にとって、出会う人や見る景色、触れるものすべてが未知との遭遇なわけです。最初はママ以外の人間とのコミュニケーションもままならなかったジャックですが、「プラスチックのように柔軟な」子供らしく様々な事をして吸収し、次第に周囲の人々にも心を開いていきます。そんな彼は絶望したママを再び救う事になる。

現実味のある演出や巧みなストーリーテリング、俳優陣の演技、どれも素晴らしい。特筆すべきはやはりブリー・ラーソン。まだ20代半ばという若さにもかかわらず、息子を愛する母親の芯の強さを体現した迫真の演技に圧倒されました。
そしてジャック役のジョイコブ・トレンブレイも凄い。撮影当時は8歳だったそうですが、5歳のジャックを見事に演じきってました。決して利口すぎないところとか少しずつ社会性を身につけていく過程とか、ものすごくリアルなんです。パンフレットによるとあの長い髪はカツラだったんですねぇ。

本作は「部屋の中の暮らし」と「外の世界に脱出してから」の2つのお話で構成されてますが、映画では語られない「その先の未来」について思いを馳せずにはいられない。いずれジャックに父親について話さなければならない時もくるだろう(テレビの取材でジョイは「ジャックに父親はいない」と答えてましたが)。そう思うと胸が締めつけられますが、ずっと寄り添いながら生きてきた2人は強い絆で結ばれているからきっと大丈夫。物語のラストでかつて自分達が囚われてきた”部屋”にさよならを言う場面は希望を暗示しているように思えて思わず涙がこぼれました。

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